青之丞(あおのすけ)の旅と読書日記

旅の途中で読んだ本の紹介と、撮った写真にまつわる歴史

『Aではない君と』 薬丸岳  講談社

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社会派ミステリーの第一人者・薬丸岳さん。間違いなく薬丸岳さんの代表作となる1冊。

薬丸岳さんの作品は、ほとんどの人間が経験することはないけれど、でもほとんどの人間が経験する可能性を大きくもつ出来事を描く作品が多いので、読後しばらくその思考から逃れられない。この作品もそのひとつ。

 

『自分の息子が人を殺してしまったら、その親として何ができるのだろうか?

いや、なにをすべきなのだろう。』

 

ほとんどの親は、自分の息子が人を殺すなんて経験をしないだろうが、すべての親はその親になる可能性がある。ここに描かれているのは、息子の罪に真摯に向き合おうとする親の姿。冤罪、動機、殺意、確認したいことがあっても親は子どもに会うことすらできない。マスコミに追われ、勤務する会社での居場所を失くし、被害者の遺族に対する謝罪など、それまでの生活は失われる。罪を償い、社会生活に戻っても、死ぬまで付きまとう、「息子が人を殺した」という事実。

血のつながりはある親子とはいえ、違う個体であり、どこまで自分の子どもに干渉すれば、親の義務を果たしたことになるのだろう。

つくづく考えさせられる。

満足度4.5(5点満点)

 

『過去と他人は変えられない』