『マチネの終わりに』 平野啓一郎 毎日新聞出版
久しぶりに高尚な大人の恋愛小説に出会った。
途中、読むのをやめたくなるほど衝撃な事件が起きるが(ショックのあまり、実際しばらく作品から離脱した)、これほど胸に突き刺さった小説は他にない。
人生でたった一人の相手。使い古された言葉でいえば、「運命の人」と出会えた人間はどれだけいるのだろうか?たった数回会っただけで、その後の人生に影響を与え続ける二人、そんな二人だからこそ出会うタイミングによっては、それが悲劇に転じてしまう可能性も大きい。まさにそんな二人を描いた作品。お互いが真に相手のことを想いすぎるとすれ違ってしまう、もともと恋愛なんて、両者の、もしくは片方の傲慢によって成立するものだと思い知らされた。
「過去は変えられないという言葉」は常日頃から心にあるフレーズだったが、この作品に読んで、そのフレーズが進化した。過去に起きた出来事は事実として変えられないが、これから先、未来の生き方によって、過去に対するイメージは変えられる。
しばらくこの作品の余韻から抜けられない気がする。
満足度4.8点(5点満点)