ローマ・テルミニ駅で警察に連行!?
ローマ・テルミニ駅
ローマのレオナルド・ダ・ヴィンチ空港に到着したのは夜だった。テルミニ駅の「パ
ニーニ」というファーストフード店で生ハムのサンドイッチを買って部屋に戻って翌日
に備えて早めにベッドに入った。夜中の3時頃、「ドン、ドン、ドン」と部屋のドアを
叩く、激しい音で目が覚める。夢うつつの状態で、ドアを開けると大柄の白人が立って
いた。部屋を間違えたらしく、僕の顔を見て無言で去っていった。いい迷惑。
目が覚めてしまい、「ここはローマなんだ」と頭に浮かんでからは興奮して、もう一度
ベッドに入る気持ちにはなれず、三脚を担いでカメラを首にぶら下げて街にでてみるこ
とにした。テルミニ駅にほど近い駅だったので、テルミニ駅を一周することにした。
誰もいないだろう思っていたが、路上生活者が大勢いた。そういえば、この旅でローマ
からフィレンツェまでの特急電車に乗る予定を思い出し、特急電車の写真でも撮ってお
こうと駅構内に入ってみると、ちょうど特急が停車していた。さっそく三脚を立ててカ
メラをセットした瞬間、後ろの方からイタリア語で大きな声が聞こえた。知り合いがい
るはずないので、ファインダーを覗いていると肩をたたかれ、振り向いた。
警官が二人立っていて、イタリア語でまくしたてられた。何を言われているのかまった
くわからず、困り果ていると、動作で「一緒に、こい!!」言葉が通じないせいもあっ
てか、かなり怒っている様子。一生懸命、拙い英語で話しかけてもまったくの無視。
すると、「カモン!(怒)」と英語。英語がわかるなら、少しは僕の話も聞いてくれ!
警官の一人が僕の腕をつかんだとき、遠くからひとりの女性が何やら、言葉を発しなが
ら駆け寄ってくる。雰囲気からは「すいませーん、ちょっと教えてください!」って感
じに見えた。やってきた女性はおそらく20代前半、とても美人。いやすごい美人。
警官二人は、僕に対応していた口調も顔つきも、見てすぐにわかるほどメロメロ状態。
二人ともすでに僕の存在は忘れている。警官は僕に背を向けて美人に対応しているの
で、ゆっくり、静かに警官を見ながら、後ずさってみた。完璧に僕は存在していない。
警官との距離が10メートルぐらい離れたところで、猛ダッシュでホテルに戻ることが
できた。あの美人のおかげで連行されずにすんだ。イタリア人男性が女性、とくに美人
に弱いおかげで救われた!
あとでわかったことだが、ローマでは公共の場で三脚を立てるのは禁止されている。
そのために連行されそうになったらしい。それ以外は思い当たらない。
旅行中、警官の姿を見るたびに、苦い想いをし続けた。