青之丞(あおのすけ)の旅と読書日記

旅の途中で読んだ本の紹介と、撮った写真にまつわる歴史

『太陽の棘』  原田マハ  文藝春秋

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終戦直後の沖縄に在沖縄アメリカ軍の軍医として派遣されたエド。親に送ってもらった高級車ポインティアックで、同僚二人とはじめてドライブに出かける。道に迷って辿り着いたところは、誇り高き画家が集まってつくった芸術の街ニシムイだった。占領された側の沖縄のタイラを筆頭とする画家たちと、医者になる前は画家になることを夢見ていた占領した側のアメリカ人エドが仲良くなるための障害はなにもなかった。絵画という言葉を通して心が通じ合うようになる。軍務が休みの度にニシムイに出かけ、一緒に絵を描いたり、絵を購入して母国アメリカに送るようになった。タイラ達画家は、戦後の貧しい生活の中でも絵を描く情熱を失うことなく、ただひたむきに生きている。そんな彼らを少しでも喜ばそうと、エドは母国アメリカから画材を取り寄せ彼らに配る。そんな中、画家のひとり、ヒガがアメリカ軍将校に暴行を受け失明する事件が起こり、エドの人生に変化が生じる。

あとがきを読むと、実際にあった話をモチーフとして書かれた小説ということがわかる。当時の沖縄はアメリカの占領下にあり、アメリカ人に対する感情は頗る悪い中、沖縄の画家とアメリカ軍医が芸術を通して心を通じ合わせたのは奇跡に近い。基地問題やアメリカ兵の犯罪など、現在でさえ戦争の影が色濃く残っているのに。

満足度4.0(5点満点)