青之丞(あおのすけ)の旅と読書日記

旅の途中で読んだ本の紹介と、撮った写真にまつわる歴史

『株式会社タイムカプセル社 十年前からやってきた使者』  喜多川泰  ディスカバリー21

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家庭を省みず、ひたすら仕事に専念していた新井英雄。自分の会社を倒産させてしまい、妻と娘にも家を出て行かれた。生活に窮するようになり、就活をはじめる。そして再就職したのが、株式会社タイムカプセル社。この会社は未来の自分に手紙を送ろうとする人たちを手助けする。10年後の自分に手紙を書いてタイムカプセル社に依頼すると、10年後に届けてくれる。郵送で送った手紙が受取人不明で返ってくると、現在の住所を調査部が調べ、特別配達困難者対策室(特配)が依頼人のもとに行って手渡しする。英雄はこの特配に配属される。年下の上司・吉川海人とともに依頼者を訪ねて歩く。依頼者は10年前に書いた自分宛の自分からの手紙を読み、人生に行き詰っていた原因は自分にあると気づくことによって、失われていた生きる喜びを再発見し新しい人生を歩む努力をする。また英雄は、上司の海人の過去を知り、その辛い過去を乗り越えることによって、人の痛みや気持ちを理解をできるようになった海人を、心から尊敬するようになり、英雄自身も生きる希望を見いだす。

たくさんの役に立ちそうな人生訓がちりばめられているので、この作品を読んで、もう一回自分の人生をゼロからやり直そうと考える読者もたくさんいると思う。ただ個人的は、この作品のように答えがひとつしかない数学的な作品よりも、幾通りにも答えがある国語的な作品に惹かれる。いささか窮屈さを感じた。

満足度2.5(5点満点)