青之丞(あおのすけ)の旅と読書日記

旅の途中で読んだ本の紹介と、撮った写真にまつわる歴史

『謎の独立国家 ソマリランド』  高野秀行 本の雑誌社

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ここ数年、ソマリア、もしくはソマリランドという国(?)の名前を耳にするようになった。ソマリアが舞台の小説を2冊読んだことがあるので、なんとなくのイメージが頭にある。ソマリランドがどこにあるのか興味があってネットで調べてみると、「アフリカの角」の部分だということがわかり、海賊の本拠地が存在することを知った。普通の人は、ネットで調べるまでで終わる。勇敢な高野さんは、行かなきゃわからないとソマリランドに実際に行ってしまった。早稲田大学探検部出身の方々は、面白いことを続けている人が多い。

ソマリアは、おおまかに三分割されている。その一つソマリランドは、国際社会からは認められてはいないが、ソマリア崩壊後に独立国家を形成した。それまでは氏族ごとに戦いで内戦状態にあったものの、国連や有力国家に頼ることなく、和平と民主主義を確立しているそうだ。そこで暮らしている人々は、カートと呼ばれる覚醒効果のある葉を食べ、気が短く、荒々しく、すべての根本は金で、何かにつけて金を要求する。とはいえ、ソマリランドはボディガードも不要で外国人が自由に町を歩けるほど平和。

ソマリランドの西の隣にあるのが、二つ目のプントランド。この国も民主主義国家を形成しているが、海賊の本拠地ボサソがあるため、外国人は自由に町を歩けるほど安全ではない。ボディガードが必要。

最後に、旧ソマリアの首都モガディショを有する南部ソマリア。ここはアル・カイダとも繋がっているアル・シャバーブが存在し、常に戦闘が起きているもっとも危険な地域。この地域を支配していたイタリアが氏族制度まで壊したため、なかなか取るべき方針が決まらず不安定。危険で出歩かない方がいい地域。

氏族同士の争いは、ヘール(掟)に従い、犠牲者の数を数えて、ヘサーブ(清算)される。男ならラクダ百頭、女ならラクダ五十頭。氏族の長老たちの話し合いによっ武装解除が実現したなんて俄かには信じられないが、この本を読むとそれが事実だとわかる。氏族についても、詳しい説明があって、以前読んだ小説の内容が今にして深く理解できた。

この地域に行こうとは簡単には思えないが、ソマリランドにとても親しみを持てるようになった。世界には知らない国がまだたくさんあるんだなぁ。

満足度4.0(5点満点)