捨身行 補陀落山寺の補陀落渡海
紀伊山地の霊場と参詣道 世界遺産2004年登録
補陀落山寺
補陀落山寺には、補陀落渡海という慣わしがありました。この寺の住職はある年齢に達すると30日の食料を積込んだ小舟に乗り外洋に向かうのです。小舟の前後左右には朱い鳥居があり、住職が乗り込むと出入口は釘で打たれて脱出できなくなります。行き先は補陀落浄土。修行のひとつ捨身行で、もちろん、どこにも辿り着けず、海の藻屑と消える運命なのです。江戸時代になると、住職が亡くなったあとに、ご遺体を小舟で海に流す水葬へと形態を変化させましたが、20人以上の住職が渡海しました。井上靖の短編「補陀落渡海記」は死ぬのが恐くて舟を抜け出そうとする住職を描いた小説です。