青之丞(あおのすけ)の旅と読書日記

旅の途中で読んだ本の紹介と、撮った写真にまつわる歴史

『神様のコドモ』  山田悠介  幻冬舎

 

f:id:bluetoone:20160309231816j:plain

 神様が「人間スーツ」を着てハワイに旅行に行っている間、神様のコドモが、神様の代わりに人間世界の日本国を見守る話。退屈で仕方ない神様のコドモは、神様のコドモなりの考えで、ズルい人間・悪い人間を懲らしめながら、弱い人間や正直な人間を助ける。日本国が見える画面は、スマホのように親指と人差し指で拡大したり、縮小したりできるし、神様のコドモがマイクをオンにしたまま叫ぶと、日本人全員の鼓膜が破れてしまうから注意が必要!また少しでも息を吹きかけたりすると、日本国の気象情報では竜巻警報が発せられる。これがこの小説の基本設定。

全部で42作品のショートショートのストーリで、冒頭は設定の理解になかなか苦しんだが、いつの間にか山田ワールドに引き込まれていた。個人的な感想かもしれないが、昔読んだ乙一さんの作品を思い出した。いじめの問題、DV、ニートなど現代の日本が抱えている社会問題を、山田さんが「こうあったらいいのにな」と思っているのだろうと想像できるような結末で描いている。最後のくだりは、どうなってしまうのか・・・。恐ろしい。

『プロポーズ』『特急メモリー号』『車椅子に小細工を』などが強く印象に残っている。ティーン向けだけの小説ではなく、大人が十分に楽しめる作品。

満足度3.8(5点満点)