青之丞(あおのすけ)の旅と読書日記

旅の途中で読んだ本の紹介と、撮った写真にまつわる歴史

『山本美香という生き方』  山本美香 日本テレビ編  新潮文庫

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2012年8月20日、シリアのアレッポで銃弾に倒れたジャーナリスト・山本美香さん。当時の山本美香さんの死亡を伝えるニュースを覚えている。危険な地域に取材に行き、そこで起こっている事実を伝えた山本さんが、どんな使命感で、どんな思考のもと、どんな情熱をもって、でジャーナリストとして活動していたのか。それも女性として。知りたいと思った。

ジャーナリストは、

自分がしあわせなら、日本が平和ならそれでいい、ということではなく、世界で何が何が起こっているのかに目を向けなくてはいけない。

そして、

死ぬために戦場を目指してはいない。そこで何が起きているのか記録して、世界に伝えるためにいる。

また、

ベトナム戦争がそう、アウンサン・スーチーが生きて解放されたのもそうであるように、外国人ジャーナリストがいることで、最悪の事態をふせぐことができる、抑止力

になるとも考えていた。口では簡単に言えそうだが、そんな簡単じゃない。それを行動で示していた山本さんのジャーナリスト魂に感服する。危険地帯に足を踏み込みつつも、最終的な目標は戦争の回避であり、平和を願っている。

イラク戦争時、各国の報道陣の拠点になっていたパレスチナホテルをアメリカ軍の戦車が砲撃し、隣の部屋にいたロイター社の報道陣が瀕死の怪我を負った。その際、山本さんと、そのパートナーの佐藤さんはカメラそっちのけでけが人を介抱する一方、中にはその様子をカメラに収める報道マンもいた。どちらが正しい、正しくないの問題ではなく、撮影し続けたクルーはジャーナリストとしての自分の使命を果たしただけであり、介抱するためにカメラを放ってしまった山本さんも、為すべきことしたまでで、どちらも責めるのはおかしいし、ましてや、現場にいない外野がとやかく言うことに惑わされてはいけないという件に、とても考えさせられた。極限の緊急時には、やはり、その人の人間性の問題なのだ。

満足度4.5(5点満点)

 

憎しみは止まらない。復讐は繰り返され、果てしなく続いていく。                                                                                                 (本文より)